産後はさまざまな体の変化を経験しますが、中でも体の痛みに悩んでいるという方は多いのではないでしょうか。この記事は産後に体が痛くなる原因や対処法を詳しく解説します。
産後の体が痛い原因とは?
産後に体が痛くなる原因として、以下のようなものが挙げられます。
- ホルモンバランスの変化
- 授乳によるカルシウム不足
- 育児による足腰の負担
- 骨盤の歪み
- 妊娠による筋力の低下
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
ホルモンバランスの変化
妊娠中~産後はホルモンバランスが普段とは全く異なり、たとえば女性ホルモンが大量に分泌され、妊娠の維持・継続、出産に向けての準備をしています。女性ホルモンの一種であるリラキシンは、出産時に赤ちゃんが骨盤を通りやすいように、関節や靭帯を柔らかくしてゆるめる働きをします。
このようなホルモンの変化によって、腰やひざ、手首、足首などの関節の痛みやきしみが生じやすくなるとされています。この影響は産後半年程度続くとされています。
また、妊娠中は炎症を抑える働きのあるステロイドホルモンがたくさん分泌されていますが、産後のホルモンバランスの変化によって関節の炎症が現れ、痛みにつながることがあります。ただ、ホルモンバランスが原因となる痛みは、生理再開によってホルモンバランスが元に戻っていけば、徐々に解消されることが一般的です。
カルシウム不足
産後はさまざまな原因によってカルシウムが不足し、関節の痛みやきしみにつながることがあります。たとえば、妊娠中から赤ちゃんに必要なカルシウムがお母さんから送られていたこと、授乳によってもカルシウムがお母さんから送られていること、ホルモンバランスの変化などが挙げられます。
妊娠中は女性ホルモンの分泌量が激増していますが、産後はその分泌がほぼゼロに。女性ホルモンの一種であるエストロゲンには、骨にカルシウムをためる働きがあり、エストロゲンが減ることで骨のカルシウム不足につながることがあります。
なお、カルシウムが過度に不足すると骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になり、気がつかないうちに骨折しているケースがあります。背中や腰の痛みが強い場合は、骨粗鬆症による骨折を疑い、受診を検討しましょう。
育児による足腰の負担
産後は上記のような体の変化に加えて、育児によっても体に大きく負担がかかります。赤ちゃんの抱っこや授乳を長時間行ったり、床に近い位置での頻回なおむつ替えは、肩こり、手首やひじ、ひざ、腰の痛みなどの原因となります。なるべく負荷のかからない姿勢をとったり、抱っこひもなどのグッズを活用したりして、無理のないようにしましょう。
骨盤の歪み
前述の通り、出産のために関節がゆるくなり、骨盤が広がりやすくなります。そして、経腟分娩によって骨盤が広がり、しばらくは骨盤が不安定な状態になっています。すると、骨盤の安定にかかわる筋肉が疲れて腰痛につながることがあります。
また、骨盤が広がると、その前にある恥骨に負荷がかかったり炎症したりして、恥骨あたりに痛みを感じることもあります。
妊娠による筋力の低下
妊娠や、それに伴う運動不足などによって、産後は筋力が低下している方も多いでしょう。そこに赤ちゃんのお世話や姿勢が悪い状態が続くといったことが加わると、筋肉痛や肩こりが生じることがあります。産後は慢性的な睡眠不足となるため、回復力も低下し、さらに筋肉痛のリスクが高まるとも言われています。
また、産後はホルモンバランスの変化やだっこなどが原因で腱鞘炎が起こりやすいです。症状が出やすい場所は腕ですが、運動不足や筋力不足の方は、足首で腱鞘炎が起こることもあります。
産後に体が痛いときの対処法とは?
産後は体の変化や育児による生活の変化があり、痛みが出やすい時期ではありますが、以下のようなことを心がけ、体の痛みの予防・改善を目指しましょう。
周囲のサポートを得る
体調が万全でない中で24時間体制の育児に入ることで、さまざまな痛みが生じます。少しでも体をいたわるためにも、家族と育児を分担したり、行政サービスを活用したりしましょう。
特に、不自然な姿勢となるおむつ替えやだっこなどはできるだけ他の人に替わってもらうことをおすすめします。
また、痛みを解消するためには、適度な運動や十分な睡眠、お風呂で体を温めることなども大事です。周囲のサポートを得て、そのような予防・改善に取り組む時間をつくりましょう。
カルシウムを摂取する
カルシウム不足は関節などの痛みの原因になるだけでなく、骨粗鬆症につながることもあります。そのため、カルシウムを積極的に摂取することが大事。
カルシウムを多く含む食べ物には、以下のようなものがあります。
- 干しエビ
- 青汁(ケール)
- ごま
- チーズ
- かたくちいわしのみりん干し
- 牛乳
など
それ以外にも、産後の体の回復や授乳のためにはさまざまな栄養素が必要です。サプリなども活用しながら、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。
座椅子を使い足腰の負担を減らす
床に座ることが多い方は、座椅子を使うことをおすすめします。座るのが楽になり、足腰への負担も軽減できます。
骨盤ベルトを使う
産後の骨盤の歪み・ゆるみには、骨盤ベルトも有効。骨盤ベルトは、骨盤のゆるみをサポートし、正しい位置に安定させるものです。着けるだけでよいので、時間のないお母さんでも取り入れやすいでしょう。
ストレッチを行う
ストレッチをすることで筋力アップや血行改善などにつながり、痛みを予防・改善できる可能性があります。
入浴後などの体が温まっているときに、軽いストレッチを行いましょう。また、ウォーキングのような軽い運動もおすすめです。赤ちゃんが外に出られるようになったら、お散歩を習慣にし、お母さんもしっかり歩くようにしましょう。
なお、過度なストレッチは産後の不安定な骨盤にとって負担になることもあるので、やりすぎには注意しましょう。
痛みがひどい場合は産婦人科にご相談を
前述の通り、産後に骨粗鬆症になることがあります。骨折することもあるため、背中や腰の痛みが強い場合は早めに受診を検討しましょう。基本的には整形外科がよいと言われていますが、健診などで産婦人科に行く機会がある場合は、まず担当医に相談してもよいでしょう。
産後は体が痛くなることも!時間を見つけて予防・改善を
産後は、ホルモンバランスの変化や授乳によるカルシウム不足、育児による負荷、骨盤の歪み、筋力低下などのさまざまな原因で体が痛くなることがあります。
忙しい時期ではありますが、栄養バランスに気をつけたり、ストレッチをしたりと、予防・改善に取り組みましょう。なお、産後は骨粗鬆症になることがあり、骨折するケースもあります。痛みが強い場合は早めに受診しましょう。