2人目の出産・育児は、1人目とは異なる大変さがあります。身体的・精神的な負担を感じているものの、どう対処したらよいのかわからない方もいるでしょう。そのようなときに役立つのが産後ケアです。今回は、国を挙げて推進されている産後ケアについて解説します。
産後ケアとは?
産後ケアとは、出産によるダメージや育児によって疲れているママをサポートし、負担を軽減して心身ともに回復できるようにするサポートのことです。「産後ケア事業」として、自治体の産後ケア施設、助産院などの公的機関が主体となって提供するサービスでしたが、最近は民間にも支援の輪が広がっています。
産後ケアを実施するのは、助産師や看護師、保育士などの専門家や母子保健推進員、事業の趣旨を理解している子育て経験者などです。提供されるサービス内容としては、以下のようなものがあります。
- 健康チェックや乳房ケアなど、ママの体の回復や健康管理を目的としたケア
- 健康チェックや体重測定など、赤ちゃんの健康管理を目的としたケア
- 育児相談
- 授乳指導 など
スタッフが自宅に訪問するサービスだけでなく、施設に滞在・宿泊できる産後ショートステイや産後デイケアなどを提供している施設もあります。
2人目の出産後に起こる変化とは?
2人目の出産では、生活や体に1人目の出産時とは異なる変化が出ることがあります。とくに、以下のような変化で悩まされることが多いでしょう。
- 上の子が赤ちゃん返りする
- 後陣痛の痛みが強くなる
- 生活習慣が変化する
- ストレスが溜まりやすくなる
- 睡眠時間が確保できない
上記の詳細と対処法についてみていきましょう。
上の子が赤ちゃん返りする
2人目の出産後の悩みとして多いのが、上の子の赤ちゃん返りです。
- 1人でトイレに行けるようになっていたのに行けなくなる
- やたらと抱っこしてほしがる
- 卒乳から時間が経っているのにおっぱいを欲しがる
上記のような行動が見られたら、赤ちゃん返りしていると考えてよいでしょう。「小学生になっていたら大丈夫だろう」と思う方もいるかもしれませんが、小学生でもやたらとくっついてきたりわがままになったりと、赤ちゃん返りを起こすことがあります。
子どもが赤ちゃん返りを起こす原因は、「弟・妹にママやパパを取られた」と感じたことによる不安です。これまで自分だけを見てくれていたママやパパが、急に赤ちゃんに目を向けるようになったことに不安を感じ、愛情を確認したくなって試し行動を取るようになります。
「もう大きくなったんだから」と突き放さず、上の子とゆっくり過ごす時間を作ったり、スキンシップを増やしたり、しっかり話を聞いてあげたりして安心させてあげましょう。
後陣痛の痛みが強くなる
国内の出産時に会陰切開が行われる割合は、初産婦が約30~100%、経産婦が10~70%とされています。数値に開きがあるのは、産院によって会陰切開に対する方針が異なるためです。
いずれにしても、経産婦のほうが会陰切開が行われる確率が低い傾向にあります。経産婦は1人目の出産時に1度会陰が伸びているので、2人目以降の出産時に会陰が伸縮しやすいからです。
しかし、後陣痛(産後に子宮が収縮する際に感じる痛み)は、経産婦のほうが強いことが多いといわれています。経産婦のほうが、初産婦よりも子宮が速く収縮するため、痛みを強く感じるようです。
後陣痛は授乳中により強くなり、人によっては本陣痛よりも強い痛みを感じることもあります。お腹を温めたり軽くマッサージしたりすると痛みが和らぐこともありますが、あまりに痛みが強い場合は医師に相談してみましょう。
生活習慣が変化する
2人目の出産後は赤ちゃんのお世話だけでなく、1人目のお子さんの育児も必要となり、これまでどおりの生活を続けるのはむずかしいでしょう。
たとえば、赤ちゃんのお世話に加えて、上の子の食事、幼稚園・保育園への送迎、寝かしつけなども必要となります。これまで以上にお父さんや他の家族の協力が不可欠となり、家事・育児の分担が出産前とは変わることが多いです。
ストレスが溜まりやすくなる
2人目の子を出産するにあたって、「1人目の子である程度育児に慣れているから大丈夫だろう」と思う方もいるでしょう。
しかし、2人同時の子育ては大変です。上の子の赤ちゃん返りや思うように進まない家事、強い後陣痛などで、想像以上にストレスが溜まることがあります。
生後12ヶ月までの赤ちゃんがいるママが「ちゃんと親の役割を果たせていない」「サポートが足りない」と感じ、疲弊したり産後うつになったりする割合は、初産婦より経産婦のほうが高いともいわれています。
睡眠時間が確保できない
前述した上の子の赤ちゃん返りで夜泣きが始まる、下の子の授乳など分刻みでしか寝られず、睡眠時間が確保できないことがあります。自分の睡眠を削り上の子の世話や家事をする事も増えてくる事でしょう。第2子は周囲からのサポートも減るというデータもあります。
そのため、昼間でもこまめに横になるようにしましょう。
2人目出産で産後ケアを利用するメリット
2人目の出産後には、上記のように生活にさまざまな変化が起こります。上の子とゆっくり向き合う時間を作ったり、休息を取ったりすることも大切となりますが、2人の子どもの育児を同時進行するなかで、思うように時間を確保できないことも多いでしょう。
そのようなときに役立つのが産後ケアです。ここでは、2人目の出産で産後ケアを利用するメリットを紹介します。
家事・育児をサポートしてもらえる
産後ケアを利用するメリットのひとつが、産後の家事・育児をサポートしてもらえることです。
たとえば産後ヘルパーを利用すれば、スタッフが自宅まで来て、食事の準備や掃除、沐浴などを手伝ってくれます。最近は「産後ドゥーラ」という、家事代行や育児相談などでママを包括的にサポートするサービスも登場しています。
これらのサービスを活用することで、家事に充てていた時間で休息したり、赤ちゃんの面倒をみてもらっている間に上の子とゆっくり過ごしたりできるため、2人目の産後の変化に対応しやすくなるでしょう。
ゆっくりと休息が取れる
産後ケアには、産後ショートステイやデイケアといった、施設に宿泊・滞在して助産師や看護師などの専門家のサポートを受けられるサービスがあります。
- 産後ショートステイ:赤ちゃんとともに入院・宿泊できる施設で育児のサポートを受けられるサービス
- 産後デイケア:赤ちゃんとともに滞在できる施設で育児のサポートを受けられるサービス
これらのサービスを利用すれば、赤ちゃんの授乳や沐浴を手伝ってもらったり、夜間に預かってもらったりできるので、ママがゆっくり休む時間を確保できます。
専門家のアドバイスを受けられる
産後ケアでは、助産師や看護師などに育児相談ができるサービスもあります。2人目の子どもの成長発達や、上の子の赤ちゃん返りにどう対応したらよいのかなど、抱えている疑問や不安を相談できれば心が軽くなるでしょう。施設によっては、パパに沐浴や抱っこの仕方などを教えてくれるところもあります。
周囲にもサポートを求めることも大切
2人の子どもを同時に育てるのは想像以上に大変です。「自分しか家事や育児に対応できない」と頑張りすぎず、周囲にもサポートをお願いしましょう。可能であれば、宅配サービスや便利な家電を活用するのもおすすめです。
家族や親族からのサポートが受けられない場合は、産後ケアサービスやファミリー・サポート・センターなど、行政や民間のサービスを活用しましょう。
2人目の産後はぜひ産後ケアの活用を!
2人目の出産後は、1人目のときとは異なる変化が起こります。1人で頑張ろうとせず、周囲にサポートをお願いしましょう。
最近は行政が産後ケア事業を推進しており、公的なサポートも受けやすくなってきています。居住地の自治体や民間施設のサービスについて調べ、上手に活用しましょう。