妊娠中にシミや黒ずみなどの色素沈着が起こりやすいことはよく知られています。しかし、産後にも悩まされることは少なくありません。今回は、妊娠中から産後にかけて起こる色素沈着の原因や予防法、対策を詳しく紹介します。
産後は色素沈着が起こりやすい!その原因とは?
「シミができやすくなった」「黒ずみが濃くなった」といった色素沈着の悩みは、多くの産後ママから聞かれます。妊娠中だけでなく、産後も色素沈着が起こりやすいのはなぜなのでしょうか。
主な原因はホルモンバランスの乱れ
産後はホルモンバランスが急激に変化します。特に影響が大きいのが、女性ホルモンの一つであるエストロゲンとプロゲステロンです。
エストロゲンは女性らしい丸みのある体を作り、肌や髪を健康に保つ働きがあります。妊娠に備えて子宮内膜を厚くするのもエストロゲンの役割の一つです。しかし、産後は分泌がほぼゼロになります。肌荒れなどのトラブルが起きやすいのは、バリア機能が低下して刺激に弱くなるためです。
プロゲステロンは妊娠を維持する一方、メラニンを生成するメラノサイトを活性化する働きがあります。そのため、メラニンが活発に生成されるようになり、妊娠中に乳頭やデリケートゾーンが黒ずみやすくなるのです。
これらの症状は、産後、女性ホルモンと同様に減少しますが、産前の状態に戻るには半年ほどかかるとされています。
産後の色素沈着の種類
妊娠中から産後にかけてできやすいのは、老人性色素斑と呼ばれるシミです。紫外線によってメラノサイトが刺激されることで発生します。大きさやできる範囲、色の濃さは人によってさまざまです。
そしてもう一つが、ホルモンバランスの変化で起こるとされている肝斑です。シミと見分けがつきにくいのですが、30代以上に多く、左右対称にできるのが特徴です。妊娠中にできる妊娠性肝斑は、ホルモンバランスが整うに従って薄くなるとされますが、ケアは欠かさないようにしましょう。
また、妊娠中は摩擦による黒ずみも生じやすいです。乳頭や脇の下、デリケートゾーンなどは衣類との摩擦が多く、もともと黒ずみやすい部分ですが、妊娠中はプロゲステロンの働きで黒ずみが濃くなる傾向があります。摩擦による黒ずみは定着しやすいため、適切なケアが必要です。
産後の色素沈着の予防法とは?
産後の色素沈着を改善するには、毎日のケアと予防が必須です。赤ちゃんの世話や家事に忙しく、後回しになりがちですが、意識してできることを実践していきましょう。
紫外線対策をする
季節を問わず、紫外線対策は不可欠です。外出時だけでなく、庭やベランダにちょっと出るときにも、日焼け止めや帽子、UV手袋などを欠かさないようにしましょう。
日焼け止めを使う場合、日常生活ならSPF30・PA+以上のものが適しています。SPFは紫外線B波、PAはA波を防ぐ効果の指標です。数値・+の数が多いほど防御効果は高くなります。ただし、産後は肌が刺激を受けやすいので状態を見ながら使いましょう。
もちろん、室内でも油断は禁物です。真皮まで届いてコラーゲンを破壊するとされるUV-Aは窓ガラスも通り抜けます。外出する予定がなくても日焼け止めを塗ったり、窓のそばで過ごすのを避けたりすることをおすすめします。ガラスにUVカットシートを貼ったり、UVカット効果のあるカーテンをかけたりするのも有効です。
スキンケア
美白効果が期待できるスキンケアを使うのもよいでしょう。ただし、産後は肌のコンディションが不安定です。刺激を受けやすくなっているため、それまで使っていた化粧品が合わなくなることもあります。違和感があったらすぐに使用を中止し、低刺激のものに替えましょう。
スキンケアをしている時間がないという方には、オールインワンタイプなどの時短アイテムがおすすめです。
なお、顔や体を洗う時にゴシゴシ擦るのもよくありません。摩擦が刺激になり、黒ずみにつながる恐れがあります。拭き取りもタオルで擦らず、水気を吸い取るように優しく押さえましょう。
睡眠時間の確保
産後のお母さんは生活パターンがガラッと変わります。赤ちゃんのお世話のために睡眠不足になる方がほとんどでしょう。
しかし、睡眠中には肌を修復し、ターンオーバーを促す成長ホルモンが分泌されます。睡眠不足が美容の大敵とされるのは、成長ホルモンが十分に分泌されず、肌トラブルが起こったり、トラブルの改善がされにくくなったりするためです。
また、シミや黒ずみなど、色素沈着の原因であるメラニンはターンオーバーによって排出されます。そのため、色素沈着の改善にも睡眠が必須です。
難しいかもしれませんが、赤ちゃんが寝ている間は一緒に寝るなどして、なるべく睡眠時間を確保しましょう。
ストレスの解消
産後ママはホルモンバランスの乱れや出産のダメージが残る中で育児をしなければなりません。赤ちゃんの命を預かっているという責任感やプレッシャー、自分の時間が全くなくなるなどストレスの種は満載です。
ストレスは自律神経に影響を及ぼし血流が悪化したり、ターンオーバーの乱れにつながったりするため、シミなどの色素沈着ができやすくなります。
パパや他の家族、託児サービスなどに頼んでゆっくり睡眠をとったり、リラックスする時間をとったりするなど、ストレスを解消する時間をつくることも大切です。
食事やサプリメントで栄養補給
食事では、抗酸化力の高い食べ物を積極的に取り入れましょう。シミの原因となる活性酸素の生成を阻害する効果が期待できます。
特に「ビタミンエース」と呼ばれるビタミンA・C・Eは、活性酸素を取り除き、免疫力を高める働きがあります。
- ビタミンA:にんじん、かぼちゃなどの緑黄色野菜
- ビタミンC:果物、ブロッコリー、ピーマンなど
- ビタミンE:ナッツ類、アボカドなど
また、赤ワインやブルーベリー、チョコレートなどに含まれるポリフェノールや、トマト、グレープフルーツなどに豊富なリコピンなども、抗酸化作用があります。
食べ物からバランスよく摂取するのが難しい場合は、サプリメントで補うのも一つの方法です。葉酸やビタミンC、カルシウムなどを配合した産後ママ用のサプリメントもあります。ただし、授乳中の人は医師に確認してから服用しましょう。
また、近年、産後のママによいと注目されているのがツバメの巣です。中国では出産祝いの定番となっているほど栄養豊富で、シミ予防・改善効果をはじめ、美肌・育毛効果もあるとされています。
セルフケアが難しい方は皮膚科にご相談を
セルフケアでは効果が感じられないと思ったら、皮膚科で相談してみましょう。病院によっては、色素沈着の状態に合わせて、レーザー治療やイオン導入、投薬などさまざまな治療法を提供しているところもあります。
ただし、産後いつからレーザーなどの治療ができるかはクリニックによって異なります。産後1ヶ月でできるところもあれば、授乳中や生理が再開していない人は不可としているところなどさまざまです。希望のクリニックに問い合わせてみるとよいでしょう。
産後は色素沈着しやすい!まずはセルフケアを!
シミや黒ずみといった産後の色素沈着には多くのママが悩まされています。産後しばらくはホルモンバランスが整っておらず、肌はダメージを受けやすくなっているためです。時間の経過とともに徐々に薄くなってくるとされていますが、紫外線対策やスキンケアなどセルフケアは必須です。改善が見られない時や、セルフケアが十分できない時は皮膚科に相談して、色素沈着を定着させないようにしましょう。