産後、急に顔がカーッと熱くなる、汗が噴き出すといったほてりの症状に悩まされる方は少なくありません。不快感や人目が気になることから、外出がおっくうになる人もいるのではないでしょうか。この記事では、産後にほてりが起こる原因を、改善方法と併せて解説します。
産後に体のほてりが起こるのはなぜ?
産後の女性は出産によるダメージだけでなく、心身の不調にも悩まされがちです。その一つが体のほてりです。冬でも上半身や顔が熱く感じられたり、急に大量の汗が出たりすることがあります。
ほてりは数分で治まることがほとんどですが、その後で肌寒さを感じる人も少なくありません。そんな不快なほてりは、なぜ産後に起こりやすいのでしょうか?
ホルモンバランスの変化
産後のほてりを引き起こす原因の一つが、ホルモンバランスの変化です。妊娠中、活発に分泌されていた女性ホルモンの一種「エストロゲン」は、出産後ほぼゼロになるほど減少します。ホルモンバランスの急激な変化は自律神経にも影響を及ぼすため、心身の不調が表れやすくなります。
体のほてりは閉経の前後に起こる更年期障害にも多く見られる症状です。エストロゲンが急激に減少するという点で、産後と更年期はよく似ています。
ただし、産後のホルモンバランスの乱れは時間の経過とともに回復してきます。ほてりも徐々に治まってくるでしょう。ホルモンバランスが元に戻るまでの期間には個人差がありますが、目安は産後3~6ヶ月とされています。
産後の疲れとストレス
体が十分に回復していなくても、家事や育児は待ったなしです。夜中の授乳や寝かしつけ、ぐずる赤ちゃんを延々とあやすなど、睡眠不足になりやすい上、家事もしなくてはなりません。体をゆっくり休められないだけでなく、ホルモンバランスの乱れも加わります。
赤ちゃんの世話が最優先になって、生活サイクルがガラッと変わり、自分の時間を確保するのも難しくなるため、ストレスを感じる方は少なくないでしょう。さらに「自分が赤ちゃんの命を預かっている」「よい母親にならなければ」というプレッシャーものしかかります。
このように、産後のお母さんは心身に疲労が蓄積しやすい状態。
こうした心身の疲労やストレスが自律神経に影響を及ぼし、体のほてりなどの症状につながることが考えられるのです。
産後の体のほてりの対処法
産後はホルモンバランスの乱れや疲労・ストレスから交感神経系が優位になる傾向があり、ほてりが起こりやすくなります。ほてりを抑えるには、血管を拡張したり発汗を抑制したりする働きのある副交感神経系を働かせることが大切です。
休息とリラックス
副交感神経を優位にするには、休息やリラックスの時間が必要です。「赤ちゃんがいるから無理」と思うかもしれませんが、パートナーや双方の両親などに協力してもらいましょう。
ぬるめのお風呂や腹式呼吸は、すぐにできるリラックス法です。体を温めたり、深く呼吸したりすることで血流がよくなり、副交感神経系の活性化につながります。
趣味を持っている方は、趣味を楽しむ時間を作るとよいでしょう。夢中になることでストレス軽減も期待できます。
ゆっくりお茶を飲んだり、美容院やカフェなどに一人で出かけたりするなど、自分なりの気分転換法をリストアップしておくのもおすすめです。
適度な運動
体を動かしている時は心拍数の増加や血圧の上昇など、交感神経系が優位になりますが、運動後は血管を拡張し、血流をよくする副交感神経系が働いてきます。そのため、適度な運動には自律神経を整える効果が期待できるとされています。
ただし、産後の体はまだ本調子ではありません。体型も戻したいからと激しい運動やトレーニングをしたくなるかもしれませんが、無理は禁物です。ウォーキングやストレッチといった、自分のペースでできる運動がよいでしょう。
特別なことをしなくても、普段の家事や育児を工夫すれば十分運動になります。歩いて買い物に行ったり、階段を使ったりするなど簡単なことから始めてみましょう。赤ちゃんをあやしながら体操すれば、スキンシップもできて一石二鳥です。
健康的な食事
栄養バランスを考えた健康的な食事も、自律神経を整えるのに有効です。
乳製品や卵、大豆に含まれるトリプトファン、カツオやマグロ、レバーに豊富なビタミンB6、炭水化物は特に自律神経を整えるのによいとされています。毎日の食事に積極的に取り入れましょう。サプリで補う方法もありますが、飲む前には医師への相談が必須です。
また、近年、自律神経との関わりが注目されているのが腸です。ストレスを感じると交感神経が活発になり、腸の動きが抑えられます。便秘や下痢、それらに伴う症状の原因にもなりかねません。ストレスを解消することはもちろんですが、腸内環境を整えることも大切です。ヨーグルトや納豆などの発酵食品や、腸内細菌の餌になる食物繊維を積極的に取り入れましょう。
医師や助産師へ相談
セルフケアで改善が見られない、ほてりによる熱っぽさや発汗がつらいと感じたら、医師や助産師に相談することをおすすめします。産後健診も必ず受けましょう。
地域の保健センターや支援機関に相談するのも一つの手です。自治体によっては産後のサポートとして、相談窓口やお母さん同士の交流の場を設けているところもあります。
大切なのは一人で抱え込まないことです。ほてりや発汗を気にしすぎて外出できなくなったり、心身ともにつらいと感じたりしたら、まずヘルプを求めましょう。家族や友人に話すだけでもストレスの軽減につながるはずです。その上で専門家の意見や適切な対処を求めるとよいでしょう。
適切なケアで快適な母親生活を
産後は、出産によるダメージから十分回復していない状態で育児や家事をしなくてはなりません。睡眠不足や不規則な生活、育児に対するプレッシャーなどに疲労やストレスを感じる方は少なくないでしょう。そのため自律神経が乱れ、体のほてりをはじめとするさまざまな不調が現れやすくなります。改善には休息や適度な運動など、適切なケアが必要です。家族や周囲の人の手も借りながら、健康で元気に過ごすことを目指しましょう。