妊娠中はホルモンバランスが普段と大きく変わりますが、母乳育児をしている場合は、授乳中もホルモンバランスが特殊な状況が続きます。
この記事では、授乳中のホルモン分泌の状況や、ホルモンバランスの変化による症状、ホルモンバランスを整える方法などについて解説します。
授乳中はホルモンバランスが変化する?
女性ホルモンが変動する
授乳中は、女性ホルモンが普段と異なる状態となっています。具体的には、以下の通りです。
エストロゲン・プロゲステロンは減少
産後は、妊娠中に増加していた女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンがほぼゼロになります。
この2つのホルモンは、妊娠を維持したり、子宮頸管を柔らかくして出産に備えたりして、妊娠中の体にとって重要な役割を果たしているのですが、それだけではなく、母乳の分泌にも関わっています。
妊娠中、エストロゲンは母乳を出すための準備をし、プロゲステロンは母乳が出ないように、プロラクチン(母乳をつくるためのホルモン)を抑えています。そのため、産後にプロゲステロンが減少すると母乳が出るようになるのです。
プロラクチン(乳腺刺激ホルモン)
プロラクチンも女性ホルモンの一種であり、母乳をつくるために必要な存在です。プロラクチンは妊娠中から徐々に分泌が増加していますが、妊娠中はプロゲステロンによって抑えられており、基本的に母乳が出ることはありません。
そして、プロラクチンの濃度は出産直後に最高になり、働きを抑えていたプロゲステロンは減少するため、母乳の分泌が始まります。
しかし、その後はプロラクチンの分泌が減っていき、出産から1週間経つと、その濃度は出産直後の半分程度になってしまうとされています。ただ、乳房が刺激されるとプロラクチンの分泌は増加するため、産後1週間頃までに頻回授乳することで、母乳の分泌が多くなると言われています。母乳育児をしたい方は、産後1週間までの授乳が重要と言えるでしょう。
なお、プロラクチンは排卵を抑えるため、母乳育児をしていると生理再開が遅れる傾向があります。
オキシトシン
オキシトシンも女性ホルモンの一種であり、母乳を出すための役割を果たしています。妊娠中にも分泌されており、出産時の陣痛、分娩、出産後の子宮回復の促進などにもかかわっています。
オキシトシンはリラックスすることで分泌されやすくなるため、母乳をスムーズに出したいときは、休息やリラックスを心がけましょう。
なお、オキシトシンは妊娠中~産後の女性だけに分泌されるものではありません。オキシトシンは「愛情ホルモン」や「幸せホルモン」などと呼ばれることもあり、分泌されると幸せな気持ちや優しい気持ちになると言われています。赤ちゃんに触れると赤ちゃんのオキシトシン分泌が増えたり、母乳中のオキシトシンが赤ちゃんに移行したり、お父さんが赤ちゃんと触れ合うことで、お父さんもオキシトシン分泌が増えたりするとされています。このようにオキシトシンはループするものなので、家族でオキシトシンのよいループが起こせるとよいですね。
卒乳後は徐々に正常に戻る
授乳中はホルモンバランスの状態が普段とは大きく異なりますが、これは、母乳育児を終えてから約3ヶ月程度で徐々に正常に戻っていくとされています。
前述の通り、プロラクチンは排卵を抑えるため、母乳育児をしていると生理の再開が遅くなることが一般的です。ただ、授乳中に生理が再開することもあり、7~8割のお母さんが、産後8ヶ月頃までには生理が再開すると言われています。
産後のホルモンバランスの乱れによる症状とは?
産後はホルモンバランスの変化によってさまざまな症状が現れます。ここでは代表的な症状を紹介します。
情緒不安定になる
ホルモンは、脳の下垂体という場所の指令によって分泌されています。そして、同じく下垂体が関わっているのが自律神経のバランス。
そのため、ホルモンバランスが急激に変化すると、自律神経にも影響が及び、結果としてイライラや気分の浮き沈みが激しくなるといった精神的な症状が現れることがあります。
不眠
自律神経が乱れ、交感神経が活発になってしまうと、眠りにくくなることがあります。産後はただでさえ育児で睡眠もままならないので注意が必要。
過度な睡眠不足は産後うつの原因になることもあるので、可能な限り細切れでもよいので時間を見つけて睡眠をとるように努めましょう。
抜け毛
女性ホルモンのエストロゲン、プロゲステロンには、髪の健康を維持したり、髪の寿命を伸ばしたりする働きがあります。そのため、妊娠中は女性ホルモンが増え、髪質がよくなったり、髪が抜けにくくなったりします。
しかし、産後は女性ホルモンが一気に減少するため、髪の生え変わりのサイクルが変化したり、妊娠中に抜けるはずだった髪が抜けたりして抜け毛が目立つようになります。
ただ、これは数ヶ月~1年ほどで改善することがほとんどなので、あまり気にしすぎないことが大事です。
肌荒れ
エストロゲンは肌のうるおいやつやを保つ働きがあります。そのため、産後にエストロゲンが減少することで、乾燥やしわ、たるみなどの肌トラブルが気になることがあります。
ホルモンバランスを整えるための対処法
授乳中にホルモンバランスが通常と異なるのは当然のことですが、それでも必要以上にホルモンバランスを乱したくはないですよね。そこで最後に、ホルモンバランスを整えるためのポイントも紹介します。
食生活の改善
栄養バランスがとれた食事を意識しましょう。女性ホルモンに似た働きをする大豆イソフラボン(大豆製品に含まれる)や、女性ホルモンの分泌によいとされるビタミンB6、ビタミンEは、特に積極的に取り入れることをおすすめします。
ストレスをためないようにする
ストレスもホルモンバランスの乱れの大きな原因となります。産後はただでさえ育児に忙しくストレスがたまりやすいので、時間を見つけてリラックスする時間を取ったり、楽しいと感じながら生活できるように心がけましょう。
適度な運動
運動することで自律神経が活性化され、ホルモンバランスの調整につながります。無理は禁物ですが、ストレッチやヨガなどの簡単なものから、体調がよい時は散歩でもよいので、軽い運動をしてリフレッシュしてみてもよいでしょう。
授乳中はホルモンバランスの変化が当たり前!
授乳中にホルモンバランスが変化するのは当たり前のことです。しかし、ホルモンバランスの変化によって、精神的な症状や、抜け毛、肌荒れなどのトラブルが生じることもあります。
忙しい毎日だと思いますが、ホルモンバランスが少しでも整うように、生活習慣に気をつけてみてください。